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外国人が不法就労者の採用に関わっていた場合不法就労助長を理由に強制退去させられてしまう?行政処分と過失の要否

2010年代以降、日本は少子高齢化などにより労働力の担い手不足となり、売り手市場になっています。
事態を重く見た政府が、外国人の雇い入れを積極的に推進した結果、2024年10月時点で、230万人を超える方が働いています。
労働力を得る選択肢が増えることは喜ばしいものである一方、不法就労などの問題も生じています。
今回は、外国人が不法就労者の採用に関わっていた場合、それを理由として強制退去させられてしまうのかについて考えていきたいと思います。

就労資格がない外国人を雇い入れしたときのリスク

不法就労者を採用した場合、企業や採用担当者は、さまざまなリスクを負う可能性があります。
特に採用担当者が外国人の場合、入管法24条3の4のイで定められている退去強制事由にあたるため、入国審査官の審査を経て退去強制令書が発付され、強制的に国外に送還されてしまう可能性が高くなります。
また、入管法73条の2で定められている不法就労助長罪に問われる可能性もあります。
一般的な犯罪は、前提として、「犯罪を行う意思」、つまり「故意」が必要となります。
しかし、不法就労助長罪の場合、たとえ故意ではなく、過失であったとしても有罪となり、結果として採用担当者が強制退去になってしまうことがあります。
このように不法就労に関与してしまった場合の法的責任は非常に厳しいものがあります。
したがって、不法就労に関与しないように事前の対策が非常に重要になります。

不法就労対策の具体的な方法は?

不法就労助長罪は、過失がないことを立証すれば免責されますが、実務上、「ないこと」立証するのは悪魔の証明に近く非常に困難です。
そのため、外国人労働者の雇い入れをしている企業にとって、不法就労対策は非常に重要です。
具体的な不法就労対策としては、採用面接の際などに、在留カードの原本を本人の面前で確認することが考えられます。
在留カードの表面には「就労制限の有無」や「在留期間」などが記載されており、これにより就労資格や在留期間を確認できます。
また、在留カードのICチップ情報と券面記載内容を照合するため、出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」の利用も有効です。
逆にこれらの対策を講じていない場合には、過失があるものとして、不法就労助長罪として処罰される可能性が高いといえますので、要注意です。

退去強制事由の解釈は非常に厳しい(行政処分と過失の要否)

不法就労に関与してしまった場合の刑事責任、すなわち、不法就労助長罪の成立は非常に厳しいものであることについて説明をしました。
それよりも遥かに厳しいのは、退去強制事由としての不法就労助長行為です。
退去強制事由としての不法就労助長行為が成立する場合、退去強制に関連する行政処分がなされる可能性があります。
これは刑事事件とはまた別の「行政処分」です。
「行政処分」の場合、刑事事件ではありませんので、一般的に、不法就労に関与してしまったことについての故意・過失が必要ないと理解されています。
ですので、客観的に、不法就労に関与してしまった場合、行政処分を受ける可能性は非常に高いといえます。
これが実務の通説とされていました。
しかし、退去強制に関する行政処分は、外国人の日本での生活基盤を剥奪する重大な行政処分であり、この実務の通説が妥当であるとは考えていません。
私は、この実務の通説を覆すため、「制裁的行政処分にも故意・過失」が必要とする阿部泰隆神戸大学名誉教授の意見書を引用し、裁判で戦っています。
実務の通説は調査をしてみると根拠が薄弱なものといわざるを得ません。細かい議論は割愛しますが、入管法はそのような解釈をしていません。
逆に、入管法は、「他人の行為に巻き込まれた場合には、故意・過失が必要である」と解釈しているのです。
実際に、入管OBが執筆した書籍でも、同様の解釈が示されています。
ただし、一度、不法就労に関与してしまったと認定された場合、過失が緩やかに解釈されているのが実務ですので、やはり、事前の防御策が必要となります。
したがって、警察や入管から、不法就労に関与したとの嫌疑を受けてしまった場合には、不法就労に精通した弁護士にすぐに相談することを強くお勧めします。

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